2023年秋頃に麻布台ヒルズが開業予定!
施設内には日本一高い330mの超高層ビルや日本一高い300億円の分譲マンションなど話題です。
麻布台ヒルズの建築業者は国内を代表する3社。
その中でも、一人負けの状態だったのが三井住友建設。
市況の悪化など置かれている事態は同じですが、その他のゼネコン2社は前年度を上回る業績でした。
業績以上に責任重大なのが工事の遅れ。
三井住友建設が担当する「麻布台ヒルズレジデンスB」は大幅に遅延。
現時点では骨組みが設置されているだけで完成のイメージが全くない状態です。
三井住友建設の工事の遅れは業績悪化の要因の一つでもあるので、簡単に工事損失について振り替えつつ、なぜ工事が遅れているのか?まとめていきたいと思います。
目次
麻布台ヒルズは三井住友建設の業績悪化の原因
「麻布台ヒルズ」は2023年秋頃に開業を予定しています。
ほとんどの建物が完成していないので急ピッチで工事中です。
麻布台ヒルズの企画運営は森ビルですが、実際に工事を行うのは下記のゼネコンです。
麻布台ヒルズのゼネコン3社
- 清水建設:A街区・B-2街区
- 三井住友建設:B-1街区
- 大林組:C街区
このうち、清水建設と大林組は売上1兆円を超える業界大手。
一方で、三井住友建設は準大手ゼネコンに分類されており、2社と比べると実績やノウハウ、コスト競争力など劣る面があります。
三井住友建設は2023年3月期の当期純利益は約257億円の赤字でした。
業績悪化の理由は下記にある通り、「大型建築工事」の工事損失が影響しています。
(引用:三井住友建設 2023年3月期決算短信)
「国内大型建築工事」について同社は具体名を出していませんが、赤字の原因となった大型建築工事とは「麻布台ヒルズ」の可能性が高いです。
業界では常識とのこと。
つまり、三井住友建設は麻布台ヒルズの建築工事の影響で業績悪化・株価下落と言っていいと思います。
三井住友建設が多額の工事損失で一人負けした要因
三井住友建設が2023年3月期に赤字になったのは麻布台ヒルズ関連の工事損失の影響が大きいです。
この工事損失は合計で315億円であり内訳は下記の通りです。
麻布台ヒルズ関連の工事損失
- 建設資材高騰などの損失:約62億円
- 製品不具合に伴う損失:約253億円
大きくこの2点です。
特に、製品不具合は決算だけでなく工事の遅れにも関係している可能性が高いです。
建設資材高騰はゼネコン負担
新型コロナやウクライナ戦争により建設資材の調達が困難になり、更に急激な円安によって建設資材が高騰しました。
ここには建設資材だけでなく、コロナ禍の感染対策で上昇した人件費も含まれているはずです。
建設資材高騰は基本的にゼネコンの負担です。
契約時よりも建設コストが大幅に上昇したとしても、発注者(森ビル)と結ばれた請負価格(受注高)の中からゼネコンが負担しているのが現実です。
業界団体では請負価格に物価変動を想定したスライド条項を提案しているようですが、発注者に価格転嫁の交渉は難航している模様です。
極論を言えば、建設コストが上昇しても受注高でいかに利益を出せるかがゼネコンの腕の見せ所だと思います。
実際、同じ状況に置かれた2社はしっかりと利益を出しており、近年では見られないほど建設資材が高騰したとは言え、これを言い訳にするのは難しい面があると思います。
工場製作部材の製品不具合
今回の損失で最も大きかったのが製品不具合に伴う損失です。
ここで言う製品とは、プレキャストコンクリート(PC)のことです。
プレキャストコンクリートとは、専用工場でコンクリート製品を製作した部材です。
一般には建設現場にてコンクリートを流し込んで作業を行いますが、プレキャストコンクリートの場合は事前にコンクリートが組み立てられています。
この工法のメリットは、部材の均一化や低コスト化、工期短縮などがあります。
三井住友建設は2022年に脱炭素化に向けたCO2排出ゼロのプレキャストコンクリート部材製造工場を新設するなどPC工法に強みを持っています。
でも、麻布台ヒルズの工事ではPC部材が業績だけでなく工事の遅れにも影響している可能性大です。
既にPC部材を設置していたのでその取り替えや部材の破棄、再製作費用などが製品不具合による損失となりました。
PC部材は早期に綿密な設計が前提であり、均一性がある為に規格外への対応が難しいデメリットがあります。
同社の中期経営計画には「複雑な部材の施工図作成の遅れにより製作工程が逼迫」とあるので、準備していたPC部材が工事段階で異なっていたと判明した模様です。
虎ノ門麻布台再開発B街区が大幅に遅れている理由
麻布台ヒルズは大規模・複雑なプロジェクト
麻布台ヒルズ、別名「虎ノ門・麻布台地区第一種市街地再開発事業」は、都市再生特別措置法に基づき「特定都市再生緊急整備地域」に指定されています。
国際競争力強化を図る上で特に重要な地域とされている施設です。
(引用:森ビル)
麻布台ヒルズには、「麻布台ヒルズ森JPタワー」や「麻布台ヒルズレジデンス」などの高層ビルを建築しつつ、地下でも地下鉄の接続通路や電線・下水道などのインフラを行なっており、ゼネコン各社と連携して工事を進めていく大変さがあります。
そして、三井住友建設が担当しているパートがB-1街区。
清水建設とのJVで土木工事も行っていますが、メインは高さ270mの「麻布台ヒルズレジデンスB」の建築です。
(各レジデンス棟のフロアマップは麻布台ヒルズレジデンスをご覧ください)
同社の中期経営計画では「高難度な」国内大型建築工事と表現があります。
確かに難易度が高いのは間違いないと思いますが、正直なところ業績悪化を正当化する為の言い訳に過ぎないのかなと勘繰ってしまいます。
現に他のゼネコン2社は着々と工事を進めています。
特に、清水建設はメインタワーの建設も完了し麻布台ヒルズレジデンスAも終盤です。
おまけに、地下鉄の接続通路工事や下水道など土木関連も同時進行中でのスピード感はさすが大手。
三井住友建設担当のB-1街区が大きく遅れた理由
三井住友建設の麻布台ヒルズの工事が遅れている原因は大規模プロジェクトの経験不足だったのかなと思っています。
麻布台ヒルズでは、高層タワーの建築と同時に地下のインフラ工事と複雑なプロジェクトですが同社には少し不慣れだったのではないかなと…。
もちろん、PC部材の不具合も工事が遅れている理由の一つではあると思います。
設置したPC部材を取り外して新たなPC部材を再製作は相当時間のロスです。
それが基礎工事に必要な部材なら工事が完全にストップもあるかもしれません。
でも、三井住友建設の工事は最初から出遅れている感がありました。
今から1年以上も前から「麻布台ヒルズレジデンスB」の工事は遅れているというのが素人でも分かるほど。
去年の2022年6月頃には清水建設が担当している「麻布台ヒルズ森JPタワー」がほとんど完成しており、B-2街区の「麻布台ヒルズレジデンスA」も既に工事が始まっており10階くらいまでは出来上がっていました。
一方で、この時の「麻布台ヒルズレジデンスB」は外観の工事を進めている様子は一切なし。
本来なら工事が始まっている場所に建物の気配がなかったので奥に見えていた建物が麻布台ヒルズレジデンスBと勘違いしていたほど。
麻布台ヒルズは、不測の事態続きで森ビルやゼネコン泣かせのプロジェクトだと思います。
新型コロナウイルスの感染拡大やウクライナ戦争、急激な円安など今もその影響を受けています。
ただ、長期間に及ぶプロジェクトの場合は想定外の事態が起こるのが通常です。
そのリスク管理が三井住友建設には欠けていた点だったのかなと思います。
(2023年2月頃の工事状況。数ヶ月経過後もほぼ変化なし)
また、気になるのが外観の進捗状況にほとんど変化がない点です。
2023年1月頃にはクレーンタワーが6基ないし7基設置されていました。
そのままの勢いで高くなっていくのかなと思いきや、この半年間は麻布台ヒルズレジデンスBの進捗状況はほとんど同じです。
基礎工事やPC部材の再製作で時間がかかっているからなのかもしれませんが、これは相当スローペース。
骨組みの高さは約20mくらいですが、ここ数ヶ月ずっと同じ高さのままです。
麻布台ヒルズレジデンスBはいつ完成するのか?
(2023年6月頃の麻布台ヒルズレジデンスBの状況)
麻布台ヒルズレジデンスBの完成時期は、早くても2024年頃、遅いと2025年だと思っています。
こちらの記事の通り、麻布台ヒルズは11月24日にオープンしました。
麻布台ヒルズ森JPタワー内のタワープラザやヒルズハウス、ガーデンプラザで盛り上がる中、工事車両や建設作業員が行き来するレジデンスB。
現状だと完成は2024年に終わらない可能性も出てきました。
詳しくは上記の記事をご覧頂きたいですが、1週間に1階分工事が進むとしても14.5ヵ月も時間がかかる計算です。
レジデンスBの部屋数は970戸もあり、内装工事には他の建物より多くの時間が必要になるはずです。
麻布台ヒルズレジデンスBには幹線道路や麻布小学校が隣接しており安全管理には十分配慮する必要があります。
おまけに、開業後は人通りが一気に激しくなることで工事車両が行き来するのも困難になるので工事のペースが遅れる可能性もありそうです。
まとめ | 三井住友建設の責任重大
まとめ
- 業績悪化の大型建築工事は麻布台ヒルズ
- 工事の遅れは大型プロジェクトの経験不足?
- 麻布台ヒルズレジデンスBの完成は2024年頃
麻布台ヒルズは30年の月日と総工費5800億円をかけた森ビル悲願のプロジェクト。
「シームレスにつながる街」というコンセプトで住居に重点を置かれています。
麻布台ヒルズ全体の総戸数は約1,400戸。
そのうち、全体の7割に相当する麻布台ヒルズレジデンスB(約970戸)が開業時期に間に合わないのは大打撃。
おまけに、工事完成時期も未定となれば、麻布台ヒルズ全体のブランドに影響を与えかねません。
少なくとも、森ビルにとっては完成まで家賃収入が得られず機会損失なので業績に悪影響なのは確かです。
工期が遅れたことで三井住友建設に対して損害賠償請求…なんて事態もゼロではありません。
三井住友建設にとって麻布台ヒルズの工事は頭の痛い問題のはずです。
2023年3月末決算で工事損失引当金の繰入を計上していますが、工事の遅れにより更に損失が拡大する可能性が高いと個人的に思っています。
もし、自分がリスクテイカーなら三井住友建設を空売りしているところです。
実は麻布台ヒルズレジデンスBの前をほとんど毎日通っており愛着みたいなものがあります。
ということで、三井住友建設、ガンバレ!