2023年秋頃に麻布台ヒルズが開業予定!
施設内には日本一高い330mの超高層ビルや日本一高い300億円の分譲マンションなど話題です。
ここを建築するゼネコン(建設業者)は3社。
その中で、三井住友建設だけが赤字計上し一人負けの状態でした。
業績悪化の原因となっている「大型建築工事」は「麻布台ヒルズ」の可能性が高いと思っています。
少なくとも同社が担当する建物は明らかに工事が大きく遅れておりマイナス要因となっているのは間違いないはず。
ゼネコンの仕組みを簡単に振り返りつつ、三井住友建設の業績悪化の理由について掘り下げていきたいと思います。
目次
大型建築工事損失で三井住友建設が巨額赤字
「麻布台ヒルズ」は2023年11月24日に開業予定!
高さ330mの日本一高いビルや分譲価格300億円の物件など話題の施設です。
この麻布台ヒルズを企画運営を行うのが不動産ディベロッパーである森ビルです。
森ビルは地権者との交渉やデザイン、完成後の運営が役目であり、実際に工事を行うのは下記のゼネコン3社です。
麻布台ヒルズのゼネコン3社
- 清水建設:A街区・B-2街区
- 三井住友建設:B-1街区
- 大林組:C街区
3社のうち、三井住友建設は2023年3月期の当期純利益は約257億円の赤字を計上。
三井住友建設は2022年期に続き二年連続の赤字決算となりました。
業績悪化の理由は下記の通りです。
(引用:三井住友建設 2023年3月期決算短信)
三井住友建設は2023年度に3回の下方修正を行った影響で株価は大幅に下落。
約10年ぶりの安値更新で短期だけでなく長期の株価トレンドも下降傾向にあります。
2024年3月期の最終損益は約40億円の黒字の予想となっています。
三井住友建設の業績低迷となっている原因は2024年度も続くので向上させていくのは簡単ではないはずです。
一方で、清水建設と大林組の業績は前年同月比で増収増益を記録。
当期純利益は、清水建設が約490億円、約776億円と好調です。
株価も週足では上昇トレンドで上がっており、大林組はもうすぐでコロナ前の株価に到達しそうな勢いです。
つまり、ゼネコン3社の中で三井住友建設だけ一人負けの状態です。
資材価格高騰などゼネコンが減益になる理由
国内の建設業者には売上が1兆円を超えるスーパーゼネコンという企業が5社あります。
清水建設と大林組はスーパーゼネコンで業界大手。
2社とも国内外で複数のプロジェクトを抱えており、リニア中央新幹線工事も担当していました。
一方で、三井住友建設は売上3000億円を超える準大手ゼネコン。
三井グループと住友グループの建設会社が合併した企業です。
三井住友建設はゼネコン3社の中では規模が小さく麻布台ヒルズなど大型建築工事の影響を受けやすい傾向です。
建設コスト負担でゼネコンは軒並み減益予想
新型コロナが収束し多くの業種の見通しは明るいですが、ゼネコン各社は24年3月期を減益予想する企業が多いです。
減益の理由は、資材価格や人件費など建設コストの高騰です。
建設資材や人件費は新型コロナウイルスの影響で上昇。
最近ではウクライナ戦争や急激な円安で建設資材などの建設コストが急騰しています。
建設コストは基本的にゼネコンが受注した金額の中に含まれています。
建設の技術はもちろん、受注高でいかに利益を出せるかもゼネコンの腕の見せ所です。
基本的に、高騰した建設コストはゼネコンの負担。
実際、ゼネコン各社の決算で「資材価格高騰で工事損失」という文言がちらほら見られます。
また、高い品質・精度の維持にも建設コスト増に影響しそうです。
大手ゼネコンの大成建設が札幌市で建築中の高層ビルが施工不良により、ビルを取り壊し立て直しするというニュースがありました。
法令遵守は当然ですが、今回の事態を受けてより厳しいチェック体制が取られそうな気もします。
そして、工事の遅れで売上にも影響があります。
ゼネコンは売上を工事の進捗に合わせて計上する方法(工事進行基準)を採用しています。
建築工事が遅れれば売上計上できるタイミングも先送りになります。
資材価格高騰や工事の遅れでゼネコンの多くが減益予想も納得。
大型建築工事とは麻布台ヒルズ?三井住友建設の赤字原因
決算の通り、三井住友建設の業績悪化の主な原因は大型建築工事の損失計上にあります。
具体的なプロジェクトについて言及していません。
とは言え、「大型建築工事」とは、虎ノ門麻布台地区第一種市街地再開発事業の可能性が大きいです。
ゼネコン関係者の話もありますし、工事状況を見ても麻布台ヒルズだと思っています。
三井住友建設が担当しているのはB-1街区の「麻布台ヒルズレジデンスB」です。
高さ270mの高層ビルですが、状況はタワークレーンが設置されこれから本格的な工事着工という感じです。
高さ330mの「麻布台ヒルズ森JPタワー」も、240mの「麻布台ヒルズレジデンスA」も外観はほぼ完成しています。
一方で、「麻布台ヒルズレジデンスB」だけ明らかに工事が遅れています。
工事損失の主な内訳は、建築工法の変更や資材価格高騰などです。
この他、工事検査で不合格となった建設資材の再生産に伴う損失も計上しています。
これらが麻布台ヒルズ建築にどう関係しているのかは定かではないですが、麻布台ヒルズレジデンスBの工事遅延が三井住友建設の業績に悪影響を与えているのは間違いないはず。
脱オフィス化で発注者の森ビルもピンチ?
建設コストの影響で減益ラッシュのゼネコンに対して、森ビルをはじめ大手不動産ディベロッパーの業績は好調です。
コロナショック時にはほとんどの業種が赤字に転落しましたが、大手不動産ディベロッパーは高い利益率のまま黒字を維持しています。
森ビルの2023年3月期は直近5年間で最大の売上となる見込みです。
でも、森ビルは麻布台ヒルズが足枷となり2024年は試練の1年になりそうな予感です。
4月末現在、麻布台ヒルズの開業時期は2023年秋頃と従来のままですが、多くの建物が工事中。
この記事の通り、本当に開業時期までに完成させることが出来るのか疑問です。
今のペースだと2024年に開業時期を延期という可能性もあるような気がします。
また、オフィスフロアの入居企業が3割程度しか集まっていないという話もあります。
麻布台ヒルズ周辺は数多くのオフィスビルで供給過剰気味の上に、コロナ禍で働き方が変わり脱オフィス化、外資系企業の相次ぐリストラなど良いニュースは聞きません。
工事の遅れやテナント物件の空室、金利上昇などのマイナス要因が続く中で、総工費5800億円を計画通り黒字化するのは相当ハードルが高いはずです。
ゼネコンが建設コスト高騰を予測できなかったのと同様に、森ビルもしばらく試練が続く気がします。
まとめ | 資材高騰の影響でゼネコンは減益傾向
まとめ
- 三井住友建設は巨額赤字計上で一人負け
- 資材価格高騰の影響でゼネコン各社は減益予想
- 森ビルも脱オフィス化でピンチ?
新型コロナや急激な円安により資材や人件費などが大きく上昇。
建設業界では契約後のコストを発注者にも負担してもらうような働きかけを行なっているようですが、現状はゼネコンが泣く泣く損失を丸かぶりの状態です。
特に、規模が小さい三井住友建設にとっては影響が大きく2年連続の赤字となりました。
同社の担当する麻布台ヒルズレジデンスBの工事が大きく遅れており大きなマイナス要因のはずです。
一方で発注者である森ビルも別の理由でピンチかもしれません。
麻布台ヒルズは企画から工事まで30年。
この間に、コロナ禍による脱オフィス化で総工費5800億円を計画通り回収するのは簡単ではないはずです。
森ビルは2023年に麻布台ヒルズとともに、虎ノ門ヒルズステーションタワーを開業予定です。
オフィス需要が大きく変化していく中で森ビルは成長できるのか今後に期待。