現在、外資系投資銀行の人事部で勤務し、今年4月で2年目に入りました。入社前から運用していた日本株を中心に、勤務しながら買い増しした株式や、ドル定期預金など、合計約4000万円の資産運用をしています。同時に人事コンサルティングの会社も副業として経営中です。
今年の売却利益は、住友化学の損切り80万円を含めて150万円程度。年間配当金は90万円ほどの見込みです。もちろん、これらはすべて会社が把握した上での投資です。
「金融機関に勤めていると投資ができない」と思われがちですが、実際はそうではありません。入社する前までは金融機関の中でも最も投資に難しそうな投資銀行ですが、自分でも驚くほど投資をすることができています。今回は金融機関勤務でも投資ができる実態についてお伝えします。
金融機関勤務者の投資制限とその実態
銀行や証券会社、信用金庫、保険会社などの金融機関に勤める社員は、原則として投資に制限があります。これは投資の知識が最も高いはずの業界でありながら、実際に投資をしている社員は他業界と比べて少ない理由の一つでもあります。
私が勤務する外資系投資銀行でも、日本証券業協会のルールに則り、投資に一定の制限があります。個別株への投資を完全に禁止している金融機関もあります。例えば、生命保険のファイナンスを担当している友人は個別株への投資ができず、ETFやインデックスファンドへの投資に限定されています。
この友人は妻名義で資産運用をしているそうですが、これには注意が必要です。多くの金融機関では、投資制限は社員本人だけでなく、配偶者や家族にも適用されるケースがあります。
投資銀行勤務で実際に行っている投資運用
私の勤務先では投資は可能ですが、いくつかのルールがあります。まず、会社指定の証券会社2社のいずれかに口座を開設する必要があります。そして、それまで楽天証券やGMOクリック証券などで運用していた株式を、指定の証券会社に移管する手続きが必要でした。
現在は三菱UFJモルガン・スタンレー証券で運用していますが、正直に言うと使い勝手はあまり良くありません。スマホでの操作はしづらく、PCでも見づらいインターフェースです。さらに手数料も高く、数十万円の取引で数千円の売買手数料が取られます。
また、日本証券業協会のルールにより、信用取引を行うことはできません。そのため、レバレッジをかけた運用や空売りができないという制約があります。
投資を行う際には、社内システムから売買予定の銘柄を制限チェックした上で、問題がなければ銘柄や数量、売買の別などを申請します。さらに、インサイダー情報など約10項目のルールに抵触していないかをチェックした上で申請を提出します。
幸い、私の外国人上司は自身も投資をしているため理解があり、ランチタイムには投資の話をすることもあります。投資の事前承認申請をすれば迅速に承認してくれるので、売買のタイミングを逃さずに済んでいます。上司の理解があることは非常に大きいですね。
金融機関勤務でもできる投資と注意点
実は、投資で失敗経験があります。かつて事前承認なしで投資をしてしまったことがありました。社員の状況によっては事前承認なしでも投資を行える場合があると誤解していたのです。この件ではグローバルのコンプライアンスとやり取りがあり、処分になりそうでしたが、日本のコンプライアンス担当者がサポートしてくれたおかげで難を逃れました。
一方で、不動産投資は事前承認などは必要ありません。副業扱いなので、事前に届出を行えば不動産投資を行うことができます。また、暗号通貨はインサイダー取引などの懸念がないため、承認が不要となっています。ETFやインデックス投資も、多くの場合は制限が緩いようです。
現在、証券口座には4000万円を入れており、そのうち約2500万円分の日本株を運用しています。今年の利益は150万円程度ですが、住友化学の80万円の損切りの影響で利益が大幅に減少してしまいました。一方で、4、5年間運用していて1番の稼ぎ頭だった神戸製鋼所は半分の1800株をトランプショックの下落時に利確しました。
トランプショックの大暴落時と比べると、関税措置もあり株価が回復しています。それでも、昨年と比べるとまだまだ割安な銘柄が多いため、投資を拡大したいと考えています。
年末から注目している銘柄は、三菱UFJ、三菱商事、INPEX、フジクラ、商船三井など。基本的に配当利回りが良く、PBRが低い大手企業を中心に投資しています。すでに三菱UFJには500万円分、三菱商事には400万円、INPEXには200万円、フジクラには150万円、商船三井には100万円分を保有中です。
10月頃に投資制限がなくなったタイミングで、長期運用ができる配当利回りの良い銘柄を中心に1000万円のポートフォリオを組むと話していましたが、予定よりも三菱UFJと三菱商事を買った結果、年末から今までに投資した株は1500万円以上になります。
金融機関勤務者におすすめの副業
金融機関で勤めていると、クライアントや関係者が投資の恩恵を受けているのを見て羨ましく思い、投資をしたいと思う人は多いでしょう。投資に制限がある場合は、副業という選択肢もあります。
実は金融機関の多くで副業を認めている企業が増えています。みずほ銀行や三井住友銀行、りそな銀行、SMBC日興証券、外資系投資銀行など大手金融機関を含め、副業が可能になっているケースが多いのです。一昨年くらいのニュースで地方銀行を含んだ銀行の約半数で副業が認められたみたいな記事を見た記憶があります。
外資系投資銀行の多くで副業が可能な理由として、本業とは別に不動産経営や飲食店経営などをレイオフのリスクヘッジとして運営している社員があまりに多いため、副業ブームよりはるか前から可能になっていると聞いています。また、高収入を稼ぐ社員が多く、節税目的という理由もあります。
金融機関勤務者は金融リテラシーが高い上に、財務諸表を読み取るスキルや簿記などの汎用的なスキルを持っているので、FPとして相談に乗ったり、コンサルティングなど様々な分野で活かせることが多いです。
まとめ:制限はあっても投資は可能
憧れの外資系投資銀行に勤めることはできましたが、大きな不満の一つが投資に制限があることでした。入社してから半年間は投資の売買も一切できず、2024年8月の大暴落時に株を買うことができなかったのは残念でした。
投資をするにも一定のルールがあり、売買のたびに事前承認を取る必要があるうえ、使いづらい証券口座で運用しなければならない制約があります。もし次に転職するとしたら、投資制限のない一般の事業会社を選ぶかもしれません。
最近動画で話題の田中渓さん(元ゴールドマンサックス証券の投資部門日本共同総括)は、同社勤務時代の25歳の頃に300万円からETF投資を始めたとラジオで話していました。現在も投資ファンドで勤務しながら、個別株への投資や不動産投資、エンジェル投資家としても活動されているようです。
おすすめはしませんが、生命保険会社に勤める友人のように、配偶者や子供名義で証券口座を開き資産運用を行うケースもあるようです。ただし、絶対にやってはいけないのはインサイダー取引です。インサイダー情報を知って他人名義で運用しても、ほぼ確実に発覚し、刑事罰の対象となります。
金融機関勤務でも、ルールを守れば投資は可能です。自分の会社の規定をしっかり確認した上で、将来に向けた資産形成を進めていきましょう。
いずれにしても投資や事前の手続きなどはご自身の責任の上で行なってください。